研究課題
基盤研究(B)
多くの節足動物に寄生している体内共生微生物CardiniumとWolbachiaは、宿主の性を操作して細胞質不和合性、単為生殖、雄殺し、そして遺伝的雄の機能的雌化を誘導することが知られている。本研究では、調査したハダニ類12属47種218個体群のうち、Cardinium 感染が18種(38.3%)、Wolbachia感染が17種(36.2%)で観察され、Cardiniumへの感染率がやや高かった。Cardiniumは宿主の免疫応答遺伝子発現を誘導する一方、Wolbachiaは誘導しないが、その原因は細菌の細胞壁構造の違いによることを明らかにした。また、宿主に免疫応答遺伝子を強く発現させるCardiniumが、発現させないWolbachiaと同様に多くの宿主に寄生している要因を検討した。カイコ培養細胞中ではWolbachiaの増殖率が72時間で2倍に達するのに対して、Cardiniumのそれは低く、細菌の増殖率が感染性の違いに何らかの作用を及ぼしている可能性を示すことはできなかった。CardiniumとWolbachiaに二重感染していた種は、調査した47種中5種(10.6%)であった。このうち、細胞質不和合性が認められた2種2個体群について、CardiniumとWolbachiaが宿主の性操作に相互に関与しあっているかどうかを検討した。その結果、CardiniumとWolbachiaに二重感染している個体群における細胞質不和合性は、いずれもWolbachiaによる単独の作用であり、CardiniumはWolbachiaの作用に対して抑制的にも昂進的にも関与していないことが分かった。つまり、相互作用については、さらなる検討が必要であるものの、両細菌は宿主に対して独立に作用しているものと考えられた。
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