研究概要 |
声の基本的な音響パラメータが,加齢に伴ってどのように変化するかについて,共時的(cross-sectional)ならびに通時的(longitudinal)観点から研究を行った.音響パラメータは,基本周波数(F0),ジッタ,シマ,喉頭雑音などであった.通時的な研究では,10年から18年にわたって収録された,喉頭に異常のない男性20名,女性38名が発声した日本語持続母音/a/を分析した.統計的分析を行って以下のような結論を得た.1)個人差が非常に大きい,2)F0の下降は男性より女性に特徴的であり,過去に指摘されたことのある男性のF0上昇は認められない,3)ジッタよりシマの増大の方が加齢に伴う特徴である,4)高周波数領域における喉頭雑音は加齢に伴って増加する傾向にある.133名の男性と129名の女性を用いた共時的研究でも類似の結果を得た.一方,合成音声を用いた知覚研究では,F0,ジッタ,シマよりは,ピッチレンジ,話速,スペクトル傾斜特性の方がより年齢知覚に寄与することがわかった.
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