研究概要 |
維持血液透析患者の多くは,運動機能や日常生活活動(activities of daily living : ADL)が著しく低下しているため,定期的な運動療法が必要とされているが,週3回の血液透析治療による時間的制限があるなど,未だ効果的な介入方法は確立されていない.そこで,本研究は,外来通院している維持血液透析(HD)患者を対象に,1)血液透析期間と身体活動量の関係,2)運動機能と日常生活動作(ADL)の特性,3)非透析日における運動療法(在宅トレーニング)が運動機能に及ぼす効果,および4)血液透析時間内に実施される運動療法の安全性と長期効果を検討した.その結果,1)ではHD患者(対象73症例)の身体活動量は加齢に伴い減少し,運動機能はその影響を受けて低下するが,その低下率は血液透析期間が長くなると大きくなることが認められた.2)ではHD患者(対象102症例)の運動機能は地域在住者(健常者)と比べて約7割に低下し,ADLのうち約5割の者が移動中に困難感を感じていることが認められた.3)の研究(対象44例)では,患者の運動機能の改善が得られたが,運動継続のためのエフィカシーを改善するには至らなかった.さらに主題である4)の研究(対象5症例)では,血液透析治療開始後の30分以内で実施する運動療法は安全であり,運動機能やADLの向上に有効な介入法であることが認めら得た.3)の主研究では,血液透析治療日以外の在宅における運動療法の効果を検討したが,自己管理による運動実施の継続は困難であり,4)の研究で検討した透析治療中の運動療法を実施することが運動習慣を高めるなど,HD患者の疾患管理を含めた有用な介入手段となることが示唆された.
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