研究概要 |
微生物は干潟土壌において酵素分泌を行い,物質浄化や一次生産者への栄養塩提供などの役割を担っている。分泌酵素の中でもとりわけプロテアーゼは,干潟生態に系における窒素循環サイクルの形成に重要な機能を果たしていることが知られている。本研究において賀茂川河口干潟22箇所の地点でプロテアーゼ活性の測定がなされた。コンターマップ表示により,活性の高い領域はハクセンシオマネキ棲息及びホンダワラの繁茂領域と一致していることが明らかになった。さらに統計的な解析により干潟内のプロテアーゼ活性は底質の有機炭素及び窒素量と相関があることが示された。実際にタンパク質気質として血清アルブミンを土壌に負荷した結果,ATPバイオマス増加なしにプロテアーゼ活性の著しい誘導が生じた。電気泳動的解析の結果,タンパク質負荷により明確なプロテアーゼバンドが生じることが明らかになった。以上の結果タンパク質負荷により,特定の微生物によるプロテアーゼ分泌が干潟土壌系内に引き起こされる事実が示唆された。
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