研究概要 |
18世紀ウィーンとニュルソベルクを例に,職人の移動とこれに対する行政府の統制を研究した。重要な成果は3点ある。第1に,ドイツ職人は国内全域を流動していた。しかし,神聖ローマ帝国外のハンガリーやポーランド,ましてやその他の外国からの流入・流出はごくわずかにとどまった。第2に行政府の課す遍歴禁止は,ごく少数の職種にとどまった。移動を促したのは,職があるかないか,すなわち労働市場の問題が最大の要因である。第3に,職人たちは政府とともに乞食を嫌悪していた。この文化的態度は一般人のものとして近世に形成されたものと思われる。総じて,移動の上からの統制はまだ機能せず,経済と文化に規定されていた。今でもそれが自然であり,人々の意識と経済の自由に任せた方が,うまく機能するであろう。
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