研究課題/領域番号 |
19530145
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
研究分野 |
理論経済学
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
板谷 淳一 北海道大学, 大学院・経済学研究科, 教授 (20168305)
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研究期間 (年度) |
2007 – 2008
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研究課題ステータス |
完了 (2008年度)
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配分額 *注記 |
2,080千円 (直接経費: 1,600千円、間接経費: 480千円)
2008年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2007年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
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キーワード | 耐久財 / 独占企業 / 画家 / 死 / オープンループ / シュタッケルベルグ均衡 / ポアソン過程 / シュッタケルベルグ均衡 / シュッタルベルグ均衡 / ポワソン過程 |
研究概要 |
本研究は以下の特色をもつ。 (1) 画家を芸術作品(絵画)の生産者および販売者として想定する。すなわち、画家は、彼の生涯効用を最大化するように芸術品の生産量と私的消費の生涯にわたる系列を決定する。ただし、芸術作品を生産するために画家は労働を投入する必要があるが、労働投入からの不効用と芸術作品を売って得られる収入によって購入する私的財からの効用との間のトレードオフを考慮して、画家は、生涯にわたる労働投入量と私的消費量の流列を決定する必要がある。 (2) 美術品市場には、芸術作品を需要する経済主体は多数存在するばかりでなく、様々なタイプの需要者が存在する。たとえば、個人の収集家、美術館、画廊、民間会社、投機を目的として購入する商社などがある。分析の簡単化のために、転売や投資を美術品購入の主な目的とする画廊や商社のような仲介業者などは無視して、美術品の最終購入者である個人の顧客を唯一の需要者として考える。なぜなら、個人の顧客は、美術品の所有から効用を得る経済主体であるからである。さらに、個人の顧客は、無限期間生きる代表的個人を想定し、無限期間にわたり自らの私的消費と美術品購入の流列を決定する。 (3) 個々の顧客は、美術品の市場価格には影響を与えないプライス・テーカーを想定する。しかし、画家はその芸術作品の唯一の生産者なので、独占的供給者として行動する。そこで、芸術作品の独占的供給者である画家は、プライス・テーカーである顧客の行動を与件として、すなわち、顧客の反応を与件として、動学的最適化を行うので、シュタッケルベルグ・リーダーとして行動すると仮定する。 (4) 本研究のように、一人の独占者が、ある種の耐久消費財(芸術作品)を多数の消費者に異時点間にわたり生産および販売活動を行うモデルは、耐久消費財消費財独占モデルとして、従来の産業組織論の枠組みにおいて分析されてきた。このモデルの先駆者であるコース(1972)は、耐久消費財の独占者は、消費者が合理的である限り、独占者は独占力を行使できず、独占者が設定できる独占価格は競争価格に一致すると主張した。彼の研究は、その後多くの研究者の関心を集め、様々な研究が行われた。特に、均衡概念のより数学的な厳密化や独占企業の計画期間を無限期間に拡張するような分析の一般化が行われた。しかしながら、多くの分析は独占企業が完全マルコフ戦略を仮定して分析を進めている。この仮定は、分析を簡単化するのみならず、最適戦略のtime consistencyを保証する戦略概念になっている。しかし、完全マルコフ戦略は本研究には不適な均衡概念である。なぜなら、この均衡概念のもとでは、画家の死というニュースはまったく市場価格に影響をもたらさないことになる。また、われわれの分析によれば、市場価格は彼の芸術品のストック(ある時点まで、市場に供給されてきた累積生産量)のみに依存するからである。そこで、(3) で述べたように、本研究では、オープン・ループ・シュタッケルベルグ均衡の概念を用いる。この点が、従来の耐久財独占企業の従来の分析とは異なる本研究の独創的な点の一つである。 (5) オープン・ループ・シュタッケルベルグ均衡概念を用いたモデルを使って、画家死亡のニュースが伝わった直後に彼の芸術作品の市場価格がどのように反応するかを理論的に分析する。特に、市場価格のジャンプが起きるかどうか、起きるとすれば上方あるいは下方にどれだけジャンプするのかを調べる。そのためには、マクロ経済動学でしばしば用いられる比較動学の分析手法を用いる。さらに、画家は重病になり余命のアナウンスが行われた場合、すなわち、画家の死亡時点が市場参加者に完全に予想されている場合の市場価格の反応経路を分析する。
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