研究概要 |
本研究は次の2つの学術的意義を持っている:(i)今までに十分な研究がされていない経済地理モデルの中心的な問題の複雑系数理経済モデルを構築した.(ii)数理経済学の有力な数学的道具と看做されながら,その数学的な困難さから十分に使われてこなかった最先端の数値解析技法であるエージェント・ベースド・モデルを,使いやすい数値計算プログラムパッケージの形で経済学者に提供し,数理経済地理モデルを構築した.さらに,本研究はこのような学術的意義だけでなく,大きな社会的意義を有している.元来,Weidlich-Haagの人口移動モデルは,EU域内の人口移動予測を目的とした社会貢献指向の実証性重視の数理モデルである.日本では少子高齢化に伴って,地域間の人口移動は緩やかになると,かつては信じられていた.しかし長期に渡る過疎化によって人口減少が続いている地方では,集落が短期間に消滅するような人口流出が起き,それと同時に東京のような大都市では,急激な人口の流入が起きることが確実視されている.このように都市の人口集中と地方の人口流出は,人口爆発する都市を多く抱える中国や東南アジアは勿論,日本にとっても重要政策課題の一つである.本研究は,このようなアジアの重要政策課題に対して数理経済学的アプローチを試みるものであった.本研究はこの政策に対して重要な示唆を与えるものであり,大きな社会的意義を有していると言える.
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