研究概要 |
本研究は,日本の高齢者うつ病に対する問題解決療法(Problem Solving Therapy:PST)プログラムを開発し,グループ形態によるその実施法と効果を検討することを目的とする. 平成20年度は高齢者うつ病に対するPSTプログラムの実施法を確立し,治療マニュアルの作成を第一の目的とする.第二の目的は,PSTを行うための治療スタッフを養成するために,医師や医療関係者に対する教育トレーニングを行なう. 上記の目的に基づいて,まず,高齢者うつ病に対するPSTに関する先行研究をレビューし,海外のマニュアルの翻訳を行い,PSTプログラムの構成要素を考案した.その結果,(1)加齢を受容する内容を含めた心理教育,(2)問題整理と同定.(3)セルフモニタリングを通して自分自身の活動を客観視し,楽しいことに気づかせ情緒的改善をはかる.(4)自己教示を活用する.(5)自己強化や他者強化を通して症状の自己コントロール感を高め,認知の変容をはかる.(6)患者の特徴に合わせて行動目標を設定し,行動を遂行する中で対人関係の増加をはかる.(7)行動遂行に伴い,患者自身や環境に関するネガティブな認知に対する認知再構成.(8)上記(3)〜(7)の対処法の実行可能性の検討およびその結果の評価.といった治療要素を含めたプログラムが作成された. 次に,治療マニュアルを作成するために,治療スタッフの間でロールプレイを行い,プログラムの構成要素の妥当性の検討が行われた.それと同時に,高齢者うつ病と診断された患者2名に対してPSTの実施を試みた.その結果,問題解決能力の向上がみられた. なお,補助事業廃止のため,第二の目的に関してはまだ遂行されていない.
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