研究課題/領域番号 |
19530738
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
研究分野 |
教育学
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研究機関 | 東京田中短期大学 (2008-2010) 浦和短期大学 (2007) |
研究代表者 |
山本 由美 東京田中短期大学, こども学科, 准教授 (00442062)
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研究期間 (年度) |
2007 – 2010
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研究課題ステータス |
完了 (2010年度)
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配分額 *注記 |
1,950千円 (直接経費: 1,500千円、間接経費: 450千円)
2009年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2008年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2007年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
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キーワード | 教育行政 / 学校統廃合 / 新自由主義教育改革 / 教育学 / 学校選択制 / 州統一学力テスト / 小中一貫校 / 小規模校 / 都市再開発 / 財政再建 |
研究概要 |
本調査研究によって、まず基本的な作業として以下のことを明らかにした。 (1)全国の都道府県の統廃合の廃校数の年度別推移、 (2)市町村合併に伴う学校統廃合のケースの抽出 (3)学校選択制に伴う学校統廃合のケースの抽出 (4)小中一貫校・小中一貫教育に伴う学校統廃合のケースの抽出 今日、学校統廃合の件数は増加し、戦後第3のピークを迎えている。教育社会学者の渡辺敬子は、50年代の昭和の市町村合併期を第1のピーク、70年代の過疎地域対策法等によって統廃合が促進された時期を第2のピークとしている。すでに、90年代後半には学校選択制とリンクした統廃合が出現している。95年には、東京都足立区で実質的な選択制が導入されたが、それは当初から統廃合に反対する保護者や地域の共同をあらかじめ解除することが目的であったと思われる。また01年をピークに市町村合併による統廃合もピークを迎えている。 近年の動向を、それ以前の統廃合と比較して、新自由主義教育改革における学校統廃合、と定義した。新自由主義教育改革とは、グローバル化における産業構造の転換に応じて、公教育を序列的に再編していく仕組みといえる。市町村合併自体が「グローバル国家への再編」に向けた「財源の大都市への集中と農村支配体制の広域的再編」でもあるわけで、学校統廃合はそのような役割の一端も担わされている。 文科省は都道府県別の年度別廃校推移数を公表しておらず、92年~07年度までの15年間のデータで実態を公表するのみであるが、この間に小・中・高合わせて4087校が廃校になっている。市町村合併の件数が多い広島県、青森県などは、合併期に廃校数は急増している。全国的には、合併直後に学校統廃合が行われるのみならず、合併前に各自治体が"身ぎれいにしておく"という表現で表わされるような、コスト削減のための統廃合を行っているケースも見られる。また、現段階では大規模な市に町村などが吸収されるケースよりも、同規模の複数自治体同士の合併のケースで学校統廃合が多く行われている。 一方首都圏では学校選択制の導入後、一層小規模化した小規模校の統廃合が出現してくる。産業構造の転換に成功した東京都は、全国でも稀な人口増自治体であり、特に23区の児童・生徒数は04年以降、増加に転じている。にもかかわらず、00~08年の間に23区で130校以上の小中学校が廃校になり、廃校数は全国2位である。それは、学校選択制とそれに対応させた「適正規模」「最低基準」設定によって小規模校が統合されているためである。さらに、行政が、小規模校は「教育的効果が上がらない」「切磋琢磨ができない」といった俗説を流布することにより、不安を煽られる保護者はむしろ積極的に大規模校に統合されることに賛同し、反対運動は組織されず速やかに執行されることになる。 しかし、90年代後半からの財界や政府の働きかけにも関わらず、学校選択制は首都圏など一部を除いては拡大せず、08年度、学校選択制を導入する自治体は激減し、全国で小中一貫教育、小中一貫校が急激に拡大する。小中一貫教育は、「中1ギャップの解消」などを表向きの導入理由としながらも、当初から施設一体型小中一貫校が実質的に統廃合になるという特徴を有していた。首都圏のみならず、全国で、小中一貫校による実質的な統廃合が行われている。これは保護者にとって、「統廃合」よりも抵抗感が少ないものになっている。
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