研究概要 |
本研究は高温超伝導GdBCO薄膜中に、磁性材料である希土類酸化物RE2O3(RE=Sm, Eu, Gd, Dy, Ho, Er and Yb)及び、希土類金属RE(RE=Sm, Gd, Dy, Ho and Nd)をドープする事により、人工ピン止めセンターを作り出し臨界電流密度の向上を目指す研究を行った。電流を多く流していくと、量子化磁束が移動しようとするが、常伝導磁性ナノ粒子にピン止めされる。 更に、磁性ナノ粒子は磁気モーメントを持っているため、量子化磁束が移動しようとすると、平行であった量子化磁束Φと磁性ナノ粒子の磁気モーメントMとの間に、トルクが働き、Mを回転させるエネルギーが必要になる。 つまり、磁性ピン止めセンターを用いることで、常伝導によるピン止めと、磁気モーメント相互作用によるピン止めの、2種類のピン止め力が共存することになり、強力なピン止めセンターになると考え実験を行った。実験の結果、Sm2O3希土類酸化物、Dy希土類金属をドープした時、自己磁場臨界電流密度Jcは、それぞれ3.1[MA/cm^2] 、4.1[MA/cm^2]と最も高くなり、磁性ナノ粒子のピン止めセンターは有効である事を確認した。また、磁気モーメントの大きさにより臨界電流密度Jcも変化する傾向が確認されている。 更に、走査型プローブ顕微鏡により薄膜の磁気力像を評価した結果、単位砲のa、b軸方向に波長が約1.5μmの周期性を持った像が得られた。これは、薄膜内で磁気的な要素が局所的に存在し、それも周期性を持っていることを意味しており、現在その起因を検討しているところである。
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