研究概要 |
圧力晶析の特徴は,結晶核のみを生成させてその成長を抑制することにある.さらに,圧力により溶解度も効果的に変化する場合もある.圧力は,溶液内への過飽和の伝播が伝熱や拡散に比べて非常に速くなる(瞬時に起こる)ことから理論的には不均一な領域が生じないため,均一なナノメータサイズ結晶核が得られることが期待できる.本研究では,圧力操作による結晶核生成のユニバーサルな現象を明らかにして,その操作方法を開発すること目的とする.これまでの4年間の成果としては,4000 気圧までのフリーピストンタイプの超高圧装置を完成でき,カメラによる内部観察,レーザーによる高圧下の標準粒子を使った粒径測定もできるようにした.そして,2種類のアンモニウム塩の水溶液中の核発生挙動を高圧下で観察し,アンモニウム塩は圧力とともに溶解度が減少し,高圧により結晶化することが分かった.さらに,エタノール水溶液で2種類のアンモニウム塩の核発生挙動では,冷却晶析と同様の準安定領域が存在し,溶解度の小さな溶液ほど準安定領域が大きくなることがわかった.また,核の成長に影響すると思われるエタノール水溶液の粘度を標準粒子を使って測定した結果,圧力を高くすると急激に高くなり,核の成長を抑制する効果が期待できた.また,新たに,電極を装着した高圧セルの開発し,電解質溶液の高圧の電気伝導度も測定できるようにした. 本研究成果より,高圧による高速結晶核発生を利用した新しいバッテリー充電技術が期待できるようになったため,新たにこの研究を発展させる計画である.
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