研究概要 |
琵琶湖産カワニナ類に広く寄生する吸虫Genarchopsis goppoは、地域によって利用する宿主が異なっている。感染実験および分子系統解析の結果、本種には隠蔽種が存在することが判明し、それぞれ異なる宿主特異性を持つことが示された。また,宿主の琵琶湖産カワニナ類においては,地域個体群間で感受性の差は見られなかった。これらの結果から,琵琶湖におけるG.goppoとカワニナ類の宿主-寄生者関係における共進化の速度は遅く,基本的には両者の種分化に伴うことが判明した。 また,当初の目標であった遺伝的多様性の定量は,宿主側の種間にかなりの遺伝的浸透がみられることが示唆される(約10%の個体にその痕跡が見られる)結果となり,ハプロタイプ等による単純な量的比較は困難であることが判明した。今後,交雑による遺伝子の多様化と感染耐性との関連性を明らかにすることが課題である。
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