研究概要 |
新たな採集によって得られた標本と博物館などに保管されている過去の標本の分類学的検討によって,日本列島に分布する50の淡水湖沼の深底部から,5科にわたる35分類群の水生貧毛類を記録した。貧毛類の群集構造は,湖沼の生物地理学的位置や栄養状態によって大きく異なっており,貧栄養湖では,密度は低いものの多様性の高い群集が見られた。一方,富栄養化の進行に伴って,ミズミミズ科イトミミズ亜科の特定の種群が高密度になって優占する群集に収れんする傾向が指摘された。この点から,深底部の群集構造の変化を追跡することで,また深底部と集水域の群集構造を比較することによって,湖底環境の変化や富栄養化の進行を監視できると考えられる。
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