研究概要 |
ザトウムシ類の核型の地理的分化に関してこれまで調査が不十分であった近畿地方南部(和歌山県,三重県)と北部(京都府),四国各地,ならびに,これらの地理変異に関連のある中部地方各地などでザトウムシ類の染色体数の調査をおこない,ザトウムシ各種の多数の集団について新たに染色体数を把握し,その地理的分化パターンを把握した。成果の大きかったのはアカサビザトウムシGagrellula ferrugineaで,本種では調査した地域すべてで染色体数の顕著な地理的分化を確認しえた。そのうち,もっとも注目されるのは,四国北部の香川県高松市南部に成立する染色体数の異なる2集団(2n=12と2n=20)の同所的生息地の確認である。香川県全体および岡山・兵庫両県の瀬戸内側では,染色体数は西から東に向かって2n=12/14/16/20と交雑帯を形成しつつ連続的に変異するので,高松市南部でのこの分布の重なりは環状重複と解釈できた。
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