研究課題
基盤研究(C)
加齢とともに罹病危険率が増加する脳血管性認知症は脳血管の梗塞、栓塞、出血等が原因となるが、本研究では、これらの脳血管性脳機能障害の予防方策および改善方策を探ることを目的としている。カルニチンは脂肪酸からのエネルギー産生に重要な働きをする生体物質である。脳も含めた体内カルニチンレベルは老齢で低下するが、カルニチンの補充が正常老化における神経機能や認知機能を活性化することを明らかにして来た。 本研究ではカルニチンのアセチル誘導体であるアセチル-L-カルニチン(ALCAR)の虚血傷害による神経細胞死抑制効果と、虚血回復後の神経細胞回復への同生体物質の効果を初代培養神経細胞を用いて明らかにするとともに、その効果のメカニズムを明らかにすることを目標とした。ラット脳の初代培養神経細胞を低酸素・低グルコース状態に曝し、その後、脳虚血後の血流再開を模すために通常の酸素とグルコース濃度を含む培地で培養を続けた時の神経細胞生存に与えるALCARの効果を調べた。低酸素・低グルコース処理3日前から培養メディウムにALCARを添加することにより細胞内カルニチンレベルを上昇させるとカルニチンが脳虚血時の神経細胞死を抑制し、かつ血流再開後のグリオーシスを促進することで脳梗塞等の外的傷害による脳傷害を抑制する有益な効果を有することを強く示唆する結果を得た。ウエスタンブロットによって脳虚血時にカルニチン存在下で発現が変化するタンパク質を解析したところ、Heat Shock Protein 72とHemeOxygenase1が増加し、Bcl-2およびGRP75が減少した。ALCARがこれらのタンパク質の発現変化を誘導し脳虚血時の細胞死を抑制している可能性が示唆された。老齢期にカルニチンを補充し脳のカルニチンレベルを上昇させることは脳梗塞等の脳虚血疾患による脳神経組織破壊の予防、回復に有効な手段である。
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Biol Pharm Bull. 31(9)
ページ: 1673-1679
110006878950
Biol. Pharm. Bull. 31