研究概要 |
微生物の指標物質であるリン脂質脂肪酸(PLFA)を試料から抽出し,分析することにより,森林内での初期の木材腐朽過程における微生物群集構造遷移の動態を明らかにしようとした。広葉樹林の尾根部,斜面部,谷部に設置した試験地に,コジイおよびスギ心・辺材から調製した木杭を埋設した。主成分分析を用いて尾根部における木杭表層部の群集構造を検討したところ,埋設直後の2ヶ月目のコジイ材,スギ辺材および心材には群集構造の違いが認められたが,12ヶ月後にはコジイ材とスギ辺材間に,24ヶ月後にはこれらとスギ心材の間にも群集構造の違いが認められなくなった。すなわち,腐朽に伴う木杭表層部の微生物群集構造は,コジイ材では埋設直後に,スギ辺材では最初の12ヶ月の間にそれぞれ大きく変動し,スギ心材では2年間にわたるゆるやかな遷移が認められ,2年後には3種の腐朽材はほぼ同様の群集構造を示すことが明らかとなった。
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