研究課題
基盤研究(C)
本研究では、我々が発見した新規アクアポリン(AQP)分子種であるAQP11に関連する分子基盤を明確にし、その機能異常がどのような分子メカニズムを通して細胞死を伴う嚢胞を形成するのかを解明することを目的とする。研究期間を通して、(1) AQP11の小胞体膜局在やテトラマー形成に必要なアミノ酸配列の解析、(2) AQP11結合タンパク質の同定とその結合の意義、(3) AQP11と小胞体ストレス、あるいは嚢胞形成関連分子とのinteractionについて解析した。その結果、AQP11の小胞体膜局在に必要なアミノ酸配列を見出すことはできなかったが、(1) AQP11の4次元構造形成に99番目のアスパラギン残基および101番目のシステイン残基が重要で、それらの残基はAQP11のC末端側の3次元構造を保つことに寄与しており、それらのアミノ酸残基が変異すると、AQP11のC末端側の3次元構造が変化するために、正しい4次元構造が形成されないこと、(2) 3種類のAQP11結合タンパク質を同定し、その中でAQP11と同じ近位尿細管細胞に発現しているAQP1は、AQP11によってその細胞膜への局在が調節されていること、(3) 小胞体ストレスが発生するような場合にはAQP11の発現量が減少すること、そして嚢胞形成に重要な分子で、小胞体ストレスとの関連性が最近報告された分子とAQP11が相互作用することなどを示唆するデータを得た。今後これらの発見に基づいて、AQP11の機能の生物学的意義の全貌解明、AQP11ノックアウトマウスにおける嚢胞形成のメカニズムなどが明らかにされるものと考えられる。なお本研究の一環として実施した、AQP11と同じ膜タンパク質の新しい機能について、また小胞体ストレスの生体モデルである実験的急性腎不全モデルを用いて、急性腎不全の新規治療薬や体質との関連性について調べた研究成果を国際雑誌に発表した。
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