研究課題
基盤研究(C)
ヒトにおいてモルヒネ活性代謝物の生成に関与するUDP-グルクロン酸転移酵素(UGT)は主にUGT2B7 と考えられている。研究代表者らは、シトクロムP450(CYP)3A4 とUGT2B7 のタンパク質間相互作用により、UGT2B7 によるモルヒネのグルクロン酸抱合の位置選択性が変化することを報告している。本研究では、(1) : 抗CYP3A2 抗体により、CYP3A2 と共免疫沈降したUGT が、触媒活性を示すことを明らかにした(DMPK 誌)。これにより、CYP によるUGT 活性の調節が動物種を超えて見い出される現象であることを示唆した。このことは、本研究の主題である、CYP 含量の個体差がUGT の遺伝的多型に依存しないモルヒネ抱合活性の個体差の要因であるとする作業仮説を支持するものである。内因性低分子化合物による調節も、UGT の遺伝的多型に依存しない個体差の要因になる可能性がある。(2) : CYP3A4 上の相互作用に関与する領域として、J-helix 領域あるいは、その周辺領域が関与することを見出し報告した(Mol. Pharmacol. 誌)。さらに、UGT 側の相互作用部位についても、基礎的な検討を行った。(3) 一方、転移性肝臓癌摘出時にセーフティマージンとして得られた正常肝組織を用いて、CYP 含量の個体差がUGT の遺伝的多型に依存しないモルヒネ抱合活性の個体差の要因であるとする作業仮説の検証を試みた。しかし現時点では、十分な例数がなく、更に例数を集める必要がある。更に、環境因子による個体差、個体内変動についても基礎的検討を行った。(4) : アデニンヌクレオチド類がUGT 活性の抑制的調節因子であることを見出した(BBA 誌)。アデニンヌクレオチドは、モルヒネ活性代謝物生成に関与するUGT2B7 の活性も阻害することが分かった。(5) 研究代表者らは、これまでに、脂肪酸アシルCoA が、UGT の内因性活性化因子であることを報告している。本研究では、アシルCoA レベルの変動が、モルヒネのグルクロン酸抱合活性にも影響することを、ラットを用いた基礎的検討から示唆した。ところが、ヒト肝ミクロゾームを用いた場合は、アシルCoA による活性化作用が観察される個体がある一方、多くの個体で活性化が認められない結果となった。この不一致の原因を精査したところ、アシルCoA によるミクロゾームのUGT 活性化には可塑性があることが明らかになり、ヒト肝組織凍結融解後のミクロゾーム調製により、活性化作用が消失することが原因であると示唆された。これらのことから、アシルCoAは、動物種、UGT 分子種を超えたUGT の調節因子であり、UGT の遺伝的多型に依存せずに、モルヒネ活性代謝物の生成の個体差、個人内変動に関与する可能性が示唆された。
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