研究概要 |
本研究の目的は, 乳幼児期の親子相互作用をアセスメントする尺度である日本語版NCATS(JNCATS : Japanese Nursing Child Assessment Teaching Scale)の簡易版の開発, およびその臨床場面での有用性についての検討であった。 健康な日本人母子(約400件)のJNCATSデータベースを利用して, 因子分析および乳幼児とその家族に関する専門家への質問紙調査の結果から31項目から成る簡易版を作成した。α係数(KR-20)および日本語版原版(JNCATS)得点との相関関係の検討の結果, 本簡易版の信頼性が示唆された。しかし, 子どもの発達に関するアセスメント結果との相関関係の検討の結果からは, 併存的妥当性を示唆する十分な根拠は得られなかった。また, 問題が疑われる親子(子どもの発達, 母親の教育年数の2変数)を検出するスクリーニング用具としての妥当性を検討した結果からも十分な根拠は得られず, 本簡易版の臨床場面での利用に疑問が投じられた。 本簡易版の開発は成功とは言えないが, これは本研究の手続き上の不備を示唆するものでも, 原版であるNCATSやJNCATSの評価を損なうものでもない。元来, NCATSは科学的行動観察に基づくユニークなアセスメント尺度であり, その簡易版開発に困難が伴うことは予測に難くない。本研究の結果は, 簡易版ではなく原版であるJNCATSの使用の必要性を示唆するものと捉えられる。今後のJNCATSの臨床場面での普及促進のためには, 訓練体制やコンサルテーション体制の整備といった, JNCATSユーザー支援ネットワークの整備が必要不可欠と考えられる。
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