研究課題
基盤研究(C)
癌抑制遺伝子maspinは、histone deacetylase(HDAC)1に結合し、represSorとして作用することが報告されている。本研究では、maspinとHDAC1との相互作用が、ヒト唾液腺細胞の分化に及ぼす影響につき検討した。ヒト唾液腺介在部導管細胞の表現形質を保有している癌細胞(HSG細胞)、SV40変異型DNA不死化ヒト唾液腺導管細胞(NS-SV-DC)およびヒト唾液腺初代培養細胞に、核移行シグナルを付与したmaspin遺伝子を導入し、核にmaspinを強制発現させたところ、maspin蛋白はHDAC1に結合し、HDAC1活性は抑制された。また、これら3種類の細胞において、介在部導管細胞マーカー(ナトリウムチャンネル、分泌コンポーネント、ラクトフェリン)の発現は低下し、筋上皮細胞マーカー(平滑筋ミオシン、サイトケラチン17、p63)の発現が増加した。他方、核にmaspinが発現しているSV40変異型DNA不死化ヒト唾液腺筋上皮細胞(NS-SV-MC)にmaspih-siRNA発現ベクターを導入し、maspidの発現を抑制したところ、筋上皮細胞マーカーの発現が低下し、介在部導管細胞マーカーの発現が増加した。以上の結果より、maspinはHDAC1に結合することによりHDAC1の下流に位置する遺伝子の発現を制御し、唾液腺においては介在部導管細胞から筋上皮細胞への分化に関与することが示唆された。さらに、maspinを核に強制発現させHDAC1活性が抑制されたNS-SV-DCを対象として、cDNA microarrayにより遺伝子群の網羅的解析を行ったところ、vimentinとIRF-6の発現が上昇しており、decorinの発現が低下していた。現在、これらの遺伝子につき解析を行っている。
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