研究課題/領域番号 |
19592356
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
研究分野 |
矯正・小児系歯学
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研究機関 | 徳島大学 |
研究代表者 |
木内 奈央 (2008) 徳島大学, 医学部・歯学部附属病院, 助教 (30457329)
大庭 康雄 (2007) 徳島大学, 大学院・ヘルスバイオサイエンス研究部, 准教授 (40294706)
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研究分担者 |
藤原 慎視 徳島大学, 大学院・ヘルスバイオサイエンス研究部, 助教 (70403706)
塩屋園 敦 徳島大学, 医学部・歯学部附属病院, 助教 (60403705)
北瀬 由紀子 徳島大学, 医学部・歯学部附属病院, 助教 (70363166)
田中 栄二 徳島大学, 大学院・ヘルスバイオサイエンス研究部, 教授 (40273693)
井澤 俊 徳島大学, 大学院・ヘルスバイオサイエンス研究部, 助教 (30380017)
谷本 起穗 (谷本 起穂) 徳島大学, 医学部・歯学部附属病院, 助教 (20380032)
木内 奈央 徳島大学, 医学部歯学部附属病院, 助教 (30457329)
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研究期間 (年度) |
2007 – 2008
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研究課題ステータス |
完了 (2008年度)
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配分額 *注記 |
4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2008年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2007年度: 3,510千円 (直接経費: 2,700千円、間接経費: 810千円)
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キーワード | 歯科矯正学 / 歯根膜細胞 / RhoE / 細胞骨格 / RNAi / アテロコラーゲン / メカニカルストレス |
研究概要 |
歯根膜は、歯槽骨に歯を植立する懸架組織であり、その主な構成要素はコラーゲンの太い束から成る歯根膜線維と線維芽細胞系の歯根膜細胞である。矯正力に伴う歯の移動において、歯根膜組織は圧縮や伸展といった形態変化を引き起こした後にリモデリングを行い、一定の形態を維持しながら歯根とともに歯槽骨内を移動する。歯根膜組織が介在しない骨癒着歯やインプラントでは歯周組織のリモデリングは起こらず歯は移動しないことからも、矯正歯科治療において歯根膜は極めて重要な組織であり、歯根膜の機械的刺激に応答したリモデリングや形態維持機構において、歯根膜細胞が中心的役割を演じていると考えられる。ところが、歯根膜細胞がどのような機構で機械的シグナルを生物学的シグナルに変換し、歯根膜組織のリモデリングや恒常性に関与しているのか、未だ詳細は不明である。過去に我々は、歯根膜細胞における力学的刺激応答性の分子制御機構を解明することを目的として、コラーゲンゲル中で三次元培養したヒト歯根膜細胞に圧縮力を負荷し、遺伝子発現パターンをマイクロアレイ法にて網羅的に解析した。その結果、圧縮力負荷群において低分子量GTP結合タンパクであるRh。ファミリーのRhoEが高発現していることを見出している(Araujo RMS, Oba Y, MoriyamaK : J PeriodontRe8, (42)15-22, 2007)。 一方、Rhoファミリーは、アクチン細胞骨格の再編成を介して様々な細胞機能を制御することが知られており、なかでもユニークなRndサブファミリーに属するRh。E(Rnd3)も細胞骨格制御に関与すると考えられているが、歯根膜細胞においては全く報告を見ない。過去に、我々はRh。Eの細胞骨格制御における役割を検討したところ、圧縮力によりRhoEが発現上昇し、ストレスファイバー形成が抑制されたが、RhoEアンチセンスオリゴを導入するとストレスファイバー形成が回復したことから(Oba Y et.al, Orthodontic Waves2008)、RhoEは歯根膜細胞において細胞骨格形成に抑制的に作用することを見出し、RhoEが歯根膜再薄のストレスファイバー形成の制御に重要な役割を担っている可能性が示唆された。 そこで、本研究では歯根膜細胞の機械的刺激に応答した細胞骨格リモデリングにおけるRhoEの役割を解明することを目
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的に、培養歯根膜細胞に圧縮力を加え、メカニカルストレス負荷時の歯根膜細胞の細胞骨格制御、とくにストレスファイバー(Fアクチン)形成におけるRhoEの役割をin vitroならびにin vivoにおいて以下の検討を行った。 まず、RhoEの三次元的な細胞内局在の解析と細胞骨格制御における役割に関して、メカニカルストレスに応答して発現する歯根膜細胞のRhoEの細胞内局在を三次元的に詳細に調べ、RhoA、Rac、Cdc42などの発現を比較検討したところ、RhoEの発現が上昇することが確認された。また、RhoEの機能に関する検討に関して、メカニカルストレス負荷の歯根膜細胞において、アンチセンスやRhoEに特異的な合成二本鎖RNAを用いINAiにてRhoEの発現制御を行ったところ、ストレスファイバー形成がRhoEにて制御されることを確認した。さらに、加重負荷後1時間から48時間の各時間におけるストレスファイバー形成の観察にっいて検討したところ、ストレスファイバー形成がRhoEにて制御されることが確認できた。 この結果を踏まえて、歯の移動時の歯根膜組織におけるRhoEの役割と、それに伴う歯根膜細胞の形態変化や細胞の分化制御をRhoEや細胞骨格関連因子の発現を検索し解析することを目的に、RhoEに対するin vivoでのRNAiを試みている。今回の実験では為害性が少なく, 近年マウス皮下腫瘍や全身性転移癌に対するsiRNA導入実験でその有効性が確認されているアテロコラーゲンを担体として用いsiRNAの導入を行っている。すなわち、RhoEに特異的な二本鎖RNA(siRNA)とアテロコラーゲンを最適な濃度比率で混合した後、lo週齢のc57BL/6マウスの歯周組織にin vivo投与しRNAiを行いその抑制効果を検討している最中である。 以上のことから、RhoEが歯根膜細胞の細胞骨格制御に深く関わっている可能性は極めて高いと考えられ、力学的刺激に応答した歯根膜組織のリモデリング機序や細胞形態の維持機能はRhoEを介する歯根膜細胞の細胞機能制御が関与していることが示唆された。本研究を通じて、力学的刺激に伴う歯根膜細胞の分子制御機構の一端が明らかになれば、歯の移動における生物学的基礎的データとして歯科矯正学分野に大きく貢献するものと思われる。また、本研究は歯周治療やインプラント、さらには歯根膜再生医学の進歩にも大きく寄与すると考えられ、新しい歯科医療の開拓と治療戦略の構築に大きく貢献するものと期待される。 隠す
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