研究課題/領域番号 |
19592426
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
研究分野 |
基礎看護学
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研究機関 | 長野県看護大学 |
研究代表者 |
鈴木 英子 長野県看護大学, 看護学部, 教授 (20299879)
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研究期間 (年度) |
2007 – 2009
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研究課題ステータス |
完了 (2009年度)
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配分額 *注記 |
2,860千円 (直接経費: 2,200千円、間接経費: 660千円)
2009年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2008年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2007年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
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キーワード | アサーティブネス / トレーニング / バーンアウ / バーンアウト / 新卒看護師 / アサーティブネストレーニング |
研究概要 |
1)パイロット研究:パイロット研究:新卒看護師のアサーティブネストレーニングのプログラム作成のため、新卒看護師におけるアサーティブネストレーニングのバーンアウトへの影響を明らかにするパイロットスタディをおこなった。その結果、はっきりとした介入効果は見られず、プログラムを再構築するために、看護管理者を中心として病棟全体がアサーティブになる必要性を感じた。そこで、看護管理者を対象としたアサーティブネストレーニングを試みてから、新卒看護師のアサーティブネストレーニングを行うこととした。まず、看護管理者のトレーニングによってアサーティブネスが向上したことを確認後、新卒看護師のアサーティブネストレーニングを実施し、そのバーンアウトの減少効果を検討した。 2)看護管理者のアサーティブになれない状況:全国重症身体障害者施設の看護部長研修会に参加した看護管理者102人を対象とし、性、年齢、役職名、看護経験年数、アサーティブネス(日本版Rathus assertiveness schedule : J-RAS)及びアサーティブになれない状況を質問紙により調査した。回答者72人の年齢は平均51.4歳、J-RAS得点平均は-8.5であった。Krippendorffの内容分析の技法を参考に対象者の言語メッセージを分類したところ、看護管理者と看護師間で「言いたかったけど言えなかった/断りたかったけど断れなかった」場面は、【管理者指導ができない状況】【勤務・看護人員調整ができない状況】【身だしなみ管理ができない状況】【スタッフ間の関係調整ができない状況】【業務調整ができない状況】【患者への適切な対応を指導できない状況】の6カテゴリーに分けられた。また、「言わなければよかった・押し付けなければよかった」場面は、【スタッフ間の関係調整で配慮が足りない状況】【個人的相談で部下を尊重できない状況】【勤務・看護人員調整で部下を尊重できない状況】【継続教育で部下を尊重できない状況】【管理者として適切な行動がとれない状況】【業務調整において部下を尊重できない状況】の6カテゴリーに分けられた。看護管理者は、注意することが問題なく、むしろ業務上必要と思われる状況でも「言えなかった」という者が多かった。また、「言わなければよかった」と感じた状況では、看護管理者の役割責任を重んじる姿勢と、その遂行における言い方、伝え
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方の反省が特徴的であった。 3)看護管理職のバーンアウトに影響する要因:大学病院の看護管理職の職場環境、アサーティブネスとバーンアウトとの関連を明らかにした。3つの大学病院で働く管理職(師長・副師長もしくは主任)203人に2007年5月後半から6月中旬まで自記式質問紙調査を実施した。有効回答は、172人であった。バーンアウト群のアサーティブネス得点の平均は、-14.3、非バーンアウト群は、-3.3でバーンアウト群が有意に低かった。バーンアウトリスクは、アサーティブネスが低いほど高く、相関係数は-0.3で弱い負の相関が有意に認められた。多重ロジスティック回帰分析の結果、アサーティブネス得点が1点下がるごとに1.03倍(3%)バーンアウトリスクが上がることが明らかになった。また、仕事量が大変少ないと感じている者がそうでない者よりも2.59倍、転職希望がない者よりも、他の職場に変わりたいと感じている者が6.51倍、別の仕事に就きたいと感じている者は5,96倍バーンアウトリスクが高かった。看護管理職では、アサーティブネスが低いほどバーンアウトする可能性が高く、他の職場に変わりたいと感じている者のバーンアウトリスクが高かった。給与や超過勤務時間よりも、対人関係がバーンアウトに関連している可能性が高く、アサーティブネスを高めることがバーンアウト予防に貢献する可能性が考えられた。 4)看護管理職のアサーティブネストレーニング前後のバーンアウト得点の比較:上記2)及び3)の結果をもとに看護管理職用のアサーティブネス・トレーニングプログラムを作成した。さらに、アサーティブネストレーニングにより看護管理職のバーンアウトが軽減する可能性を検討した。看護管理職を対象とし、アサーティブネストレーニングの直前及び3ヶ月後に質問紙調査を実施した。内容は属性、職場満足、ソーシャルサポート、転職希望、ストレスコーピング、仕事への思い、アサーティブネス(J-RAS)、バーンアウト(MBI)である。介入前後2回とも有効回答が得られた77人(看護師長15人、主任62人)を対象とした。介入前の年齢、J-RAS、MBIの平均はそれぞれ40.9歳、-5.0、10.8であった。介入前後で対応のあるT検定を行ったところ,J-RASは上昇する傾向が認められ、MBIは有意に低下した。層別にみるとJ-RAS得点がもともと低い者、研修後アサーティブネスに心がけた者でJ-RASは有意な上昇あるいは上昇傾向を示し、MBIは有意に低下した。また、職場に不満をもつ者、やりたいケアができていないと感じる者、同僚、上司、その他の相談相手のいない者でJ-RASは有意な上昇あるいは上昇傾向を示し、MBIは有意な低下あるいは低下する傾向が認められた。アサーティブネストレーニングによりバーンアウトが軽減できる可能性があることが明らかになった。特に研修後アサーティブネスに心がけた者、もともとアサーティブネス得点が低かった者で軽減が明らかで、職場環境にネガティブな印象をもつ者やソーシャルサポートが得られない者にも軽減が認められた。 5)新卒看護師のアサーティブネストレーニングのバーンアウトへの効果:本研究の目的は、新卒看護師のアサーティブネストレーニングによるバーンアウトの変化を明らかにすることであった。対象者のうち50人をトレーニング群に、28人を対照群に割り当てた。アサーティブネストレーニングの直前及び3ヶ月後に質問紙調査を実施した(2008年6月及び10月)。内容は属性、職場満足、ソーシャルサポート、転職希望、ストレスコーピング、仕事への思い、アサーティブネス(J-RAS)、バーンアウト(MBI)である。2回とも有効回答が得られた66人(トレーニング群63人、コントロール群23人)のデータを分析対象とした。結果、6月末の介入群の年齢、J-RAS、MBIの平均はそれぞれ23.3歳、-4.0、11.6で対照群は、22.3歳、-0.8、11.5であり、9月末の介入群J-RAS、MBIの平均はそれぞれ-12.7、12.6対照群は、-20.9、12.7であった。この結果アサーティブネストレーニングの効果は、認められなかった。重回帰分析を行ったところ、仕事量がバーンアウトに影響していた。先行研究によると、アサーティブネスは、バーンアウトの重要な影響要因であったが、今回の研究では、アサーティブネストレーニングによる効果は看護管理者では認められたにもかかわらず、新人看護師ではアサーティブネスの向上もバーンアウト減少効果も認められなかった。このように結果が食い違うのは、プログラムの内容、時間、時期が不適切であったためである可能性も否定できないが、就職1年目には仕事量以外にもさまざまな交絡因子があり、それらを捉えきれていないためである可能性が大きい。 隠す
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