研究概要 |
ヒトナチュラルキラーT(NKT)細胞の血液悪性腫瘍に対する抗腫瘍効果について検討した。NKT細胞は、CD1d分子に拘束され糖脂質を認識するが、CD1d 分子を発現した腫瘍細胞を直接傷害することが我々も含めて報告されている。しかしCD1d 分子を高発現しているB 細胞性腫瘍などに対して直接の細胞傷害活性がみられない場合がある。これに関して、腫瘍細胞によるNKT 活性化の抑制メカニズムが考えられた。実際、NKT 細胞はCD1d 分子を発現したCEM, MOLT4, Jurkat といったT 細胞性腫瘍株に対しては高い細胞傷害活性を示すが、同様にCD1d 分子を高発現している、RAMOS, IM9, BALL1 などのB 細胞性腫瘍株に対しては細胞傷害活性が認められない。これに対し、NKT 細胞が発現している可能性がある抑制性のNKレセプターを介した抑制の可能性があるか否かを検討した。Va24+/Vb11+TCR を持ったNKT 細胞においては、抑制性NK レセプターであるNKG2A の発現が確認された。またそのリガンドであるHLA-E 分子の発現を調べると、細胞傷害活性がみられる細胞株のいずれもHLA-E 分子を発現しておらず、またB 細胞性腫瘍株を中心とする CD1d 分子の発現がみられるが細胞傷害活性がみられない腫瘍株においては、HLA-E 分子を発現していることが確認された。このことより、腫瘍細胞株に発現するHLA-E 分子は、NKT 細胞の発現するNKG2A などの抑制性NK レセプターと相互作用し、NKT の活性化を抑制し、抗腫瘍作用からエスケープしている可能性が示唆された。今後、より解析を進め、抑制性NK レセプターに対するシグナルを阻害する等により、より効率よくNKT 細胞による癌免疫療法を発展させたいと考える。
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