研究概要 |
アメリカにおける営利大学の展開は, 既存の非営利大学によって実現されている高等教育機会の需給バランスを視野に入れたマーケティングに基づいていることが推測される。実際に, モンタナ州, ノースダコタ州をはじめとした北中部の人口密度の低い州や, デラウェア州など面積の小さい州には営利大学は展開しない傾向が観察された。同時に営利大学には州の政策によって非営利大学よりも強い規制がかけられる傾向が見られる。特に営利大学の設置を原則として全面的に禁止しているロードアイランド州や, 私立大学の中では営利私立大学にのみ教育庁による設置の規則を設けているインディアナ州などにその傾向は強く見られる。 また, 地域アクレディテーションによる規制力は, 地域アクレディテーション団体の方針によって若干の粗密の差があり, その差によって地域ごとの営利大学の展開状況の差が生まれうることも看取される。特にこの傾向はフェニックス大学(アリゾナ州), デブライ大学(イリノイ州)など全国にブランチ・キャンパスを展開する大規模営利大学のうちの数校がノースセントラル地域内に本拠地を置いていることによって強化されていると判断される。ノースセントラル地域は6地域のなかで面積が一番広く地域内の州数が最も多い。また営利・非営利を併せて地域内で適格認定されている大学数も最も多い。 本研究では, 上記のような, 高等教育の需要に対するマーケティングと, 州および地域アクレディテーション団体による規制のバランスが, 営利大学の展開を促進・阻害する要因となるという仮説を証拠立てるとともに, 設置主体が多様な高等教育機関に対して一元的に正統性を与えているアクレディテーションの仕組みについてわが国の認証評価の現状と比較しながら検討し, 第一サイクルを終えようとしているわが国の認証評価制度, とりわけ機関別認証評価の問題点と改革の方策について提言を行った。 またこれらと同時に, いわゆるスペリングス・レポートに代表される学生の学習成果を重視した高等教育機関のアクレディテーションに対する政策的要請の趨勢と, アクレディテーション団体およびその連合体による学習成果問題への対応の態様といった今日的課題についての知見を得て, アメリカのアクレディテーションおよびわが国の認証評価制度の双方における政府の関与の問題についても比較分析し, わが国に認証評価機関の自律的運営に対する提言を行った。
|