研究概要 |
言語処理の高度化に向けて,文書中の語句に基づく言語推論により複数文の意味を求めるための研究を進めた.ここで複数文というのは,1つの文の情報だけでは伝える情報が不完全となる文の集合を指す.本研究が対象とするのは,文の意味を1文単位に論理・形式表現しても,それらを並べただけでは,複数文の適切な論理・形式表現となるとは限らない場合である.本研究は,特に国民年金法の複数文を対象にし,一般性のある意味解析法を明かにすることを目的とする. 本期間は,複数文からなる条文に着目し,言語表現と論理構造(要件効果構造)との対応を分析し,注釈コーパスを作るとともに,言語表現と論理構造との対応を分類し,言語表現から論理構造を導く言語推論規則をlispにより記述した.複数文からなる条文は2文からなることが多く,多くの条文には括弧による挿入文がある.これらの条文の論理・形式表現は各文の論理式を合わせるだけでは正しい表現が得られない.言語構造が論理構造とどのように対応するかという視点から分析し,大きく5タイプ24種類に分類した.基本的には,各文それぞれに式が対応する場合,一つの式になる場合がある.それぞれに式が対応する場合,式の内容は対応する文以外の影響も受け,その影響の受け方によりタイプ分けした.この分析に基づき,言語表現上の特徴を手掛かりにして,対応する要件効果構造を導く規則を記述した.
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