研究概要 |
シェーカー型電位依存性K^+チャネルの一つであり生体に広く発現・分布しているKv1.2チャネルは遺伝子的に均質なチャネルを形成しているにも拘らず著しく性質の異なった2種類のK^+電流成分(一過性と持続性)を示すことをホールセル電流の解析により見出した. 更にパッチクランプ法を用いて1個のKv1.2チャネルのみがパッチ膜に入った状態で単一チャネル電流を解析すると, 3個の閉鎖状態と2個の開口状態が観察された. この2種類の開口状態の平均開口時間はそれぞれ1m秒以下と5m秒以上と性質が著しく異なっていた. 多くの電位依存性チャネルの開口状態は1個であり, このように平均開口時間が大きく異なっている例は現在まで報告されておらず, Kv1.2チャネルに特徴的であった. 次に, 持続的Kv1.2電流成分を選択的に阻害する新規Kチャネル阻害剤PM56D9の2種類の単一チャネル電流に対する影響を調べたところ, PM56D9存在下では平均開口時間5m秒以上の開口状態の割合が減少した例が観測された. この結果は長い開口時間を示す開状態が持続性の電流成分に, 短い開口時間の開状態が一過性の電流成分に対応していると示唆している. 以上の結果は, 1種類の均質なチャネルが2種類以上の異なった電流成分を持つという現象の説明として, "個々の均質なチャネルが複数個の性質が異なった開口状態を取ると, この単一種チャネルは各開口状態に対応した性質の異なった複数の電流成分を流し得る"という仮説を支持している.
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