研究分担者 |
林 直亨 九州大学, 健康科学センター, 准教授 (80273720)
三浦 朗 県立広島大学, 人間文化学部, 教授 (30190581)
福岡 義之 熊本県立大学, 環境共生学部, 教授 (20265028)
青木 朋子 熊本県立大学, 環境共生学部, 講師 (50433412)
遠藤 雅子 (山岡 雅子) 県立広島大学, 人間文化学部, 助教 (30336911)
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研究概要 |
運動強度が徐々に漸増し疲労困憊に至るランプ負荷運動を課し,運動に対する中枢の関与を傍証する目的で,運動中は,定期的な時間間隔で痛み閾値を測定する実験をまず実施した。運動中を通して温熱刺激に対する痛み閾値を1分毎に調べた。併せて交感神経出力の指標として瞳孔径も測定した。その結果,安静時に比較して,ランプ負荷運動中,有意な差異を認められなかったが,瞳孔径はAT付近の運動強度を境に増大した。この実験の結果を,研究への協力ならびに助言者として来日いただいた,Dr. B. J. Whipp(英国・Leeds大学)と協議し,運動強度と時間の組み合わせを考慮する必要性,また知覚系の測定も行う必要性が認識されたので,次の実験を計画した。3段階の運動強度(低・中・高強度)での一定負荷運動で,それぞれのエネルギー消費がほぼ等しくなるような運動時間を設定し,運動中と後で,電気刺激に対する知覚ならびに痛みを感じる閾値と脳の情報処理能力(カラーワードコンフリクトテスト:CWCT)を測定し,運動前と比較した。知覚感覚閾値はすべての運動強度で,運動中,有意に低下した。さらに中・高強度運動では,運動直後もその状態が継続した。痛み感覚閾値は,中・高強度運動で同様に,運動中に有意な低下を示し,運動直後も継続した。情報処理能力は必ずしも仮説に反して,CWCTの正答率が運動強度による違い(影響)は特に認められなかった。これらの結果は,運動強度が増大するにつれて,上位脳の活動が運動に占有されてくる度合いが大きくなり,痛みの処理までできなくなるという仮説は支持するものであったが,このことと上位脳の情報処理能力への影響は必ずしも同じように起こるというわけではなく,脳の有する複雑さと,今後のさらなる研究の必要性を示した。
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