研究概要 |
脂溶性ビタミンは脂質を同時に摂取しないと吸収されにくく、高齢者で脂溶性ビタミンの吸収不足が報告されている。納豆菌が産生するビタミンK結合因子(KBF)は疎水性炭素鎖を持つ物質と特異的に結合し、ミセル様構造を形成するため、脂溶性ビタミンと結合し可溶化する傾向がある。このため、納豆を同時に摂取すると脂溶性ビタミンの吸収が促進されるという報告がある。しかし、昨年度の研究で健康若年女性を対照とした臨床試験において、低脂質食摂取でビタミンK1とβ-カロテンの吸収を調べたところ、KBFにより有意に促進されなかった。そこで本年度は、ビタミンKの吸収透過実験系の確立を目的とし、小腸上皮細胞様機能を発現するCaco-2細胞を用い,フィロキノン(PQ)と胆汁酸(SDOC)の混合ミセルに,リン脂質(PC),中性脂肪(TO)を添加した時のPQの細胞透過に与える影響を調べた。[結果]5~20mM SDOCで可溶化したPQ(0.1mM)の細胞透過速度は濃度依存的に増加し,20mM以上のSDOCで細胞内へのPQ移行量が減少した。10mM SDOC存在下で,0.5~12mM PC添加の影響を調べたところ,0.5~3mM PCで,PQの細胞透過速度は4時間以降急速に増加し,6mM以上では阻害された。TOはPQと同濃度添加した時,細胞内取り込みおよび細胞透過速度を半減させた。[結論]PQの細胞透過速度は,SDOCミセルに存在する脂質の種類と濃度によって大きく影響された。SDOCは,PQの腸管腔側から細胞内,および細胞内から基底膜外側への移行を共に促進した。PCは細胞内から基底膜外側への移行を促進したが,腸管腔側から細胞内への移行は阻害した。TOはPQの腸管腔側から細胞内の移行を阻害した。
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