研究課題/領域番号 |
19650255
|
研究種目 |
萌芽研究
|
配分区分 | 補助金 |
研究分野 |
文化財科学
|
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
吉田 邦夫 東京大学, 総合研究博物館, 准教授 (10272527)
|
研究期間 (年度) |
2007 – 2008
|
研究課題ステータス |
完了 (2008年度)
|
配分額 *注記 |
3,300千円 (直接経費: 3,300千円)
2008年度: 1,300千円 (直接経費: 1,300千円)
2007年度: 2,000千円 (直接経費: 2,000千円)
|
キーワード | 漆 / 安定同位体比 / 産地同定 / 縄文ウルシ |
研究概要 |
現生の日本産漆液資料については、前年度に測定した岩手県、兵庫県、岡山県に続き、北海道網走、福島県、茨城県、京都府、岡山県の漆液資料を入手し、一定条件で酸化重合により硬化させ、漆塗膜を作成した。必要量を処理して、ストロンチウム同位体比を測定した。北海道の値がやや低<、^<87>Sr/^<86>Sr=0.705を示したが、他の資料は、0.7065-0.709の範囲に収まり、日本の8産地から入手した日本産漆はすべて、中国産の値が分布する0.712〜-0.715の範囲とは、明確に分離できることを確認した。 漆塗膜のストロンチウム濃度に関して、中国産4資料は、5〜6ppmの値で、ほぼまとまった値を示すのに対して、日本産は、2〜5ppmのグループと、11〜14ppmを示す比較的高濃度のグループに二分されている。二つのグループは、列島における地域的な特徴を示しているわけではない。いくつかの産地について、栽培土壌のストロンチウム濃度を分折中である。 縄文漆についての試行的な分析を行った。新潟県胎内市の野地遺跡(縄文時代後期後葉〜晩期前葉)から出土した漆資料を用いた。漆容器と思われる土器に付着した黒色漆について、漆塗膜と同様な処理を行い、同位体比の測定を行った。ストロンチウム濃度は、1.9ppmと低い値であった。ストロンチウム同位体比の値は日本産漆の領域、0.710以下を示している。資料が土器に付着した漆であったため、土壌が混入している恐れがあり、資料調製の方法に課題が残っているが、残渣のストロンチウム濃度が僅少であることを確認している。この資料は約3000BPの年代を示す資料で、埋蔵中の続成作用による影響はそれ程大きくないことが推定される。縄文時代の漆が列島産であることを、初めて明らかにすることが出来た。 同遺跡の漆資料についでは、年代測定、熱分解-ガスクロマトグラフィー-質量分析計、FT-IR、断面分析、EPMA分析など、多方面からの総合的な分析を行っている。
|