研究概要 |
新たなバイオモニタリング技術として、国内の河川・湖沼などの野外調査によく用いられるコイのアセチルコリンエステラーゼ(Acetylcholinesterase)をマーカー酵素として、その「免疫学的比活性」を用いて、有機リン系殺虫剤による曝露の有無を高感度・高精度で検出する技術の開発を行うことが本研究の目的である。平成20年度は、以下の研究実績をあげた。 1.酵母細胞を用いたコイのアセチルコリンエステラーゼ分泌生産と発現産物の特徴解析 酵母Pichia pastorisに分泌生産させたコイのアセチルコリンエステラーゼ"遺伝子組換え触媒サブユニット"を培養液から単離・精製し、特徴解析を行った。組換え酵素はN結合型糖鎖付加を受けていただけではなく、その一部がプロテアーゼによる切断を受けていることが示された。組換えコイアセチルコリンエステラーゼは,高い基質濃度範囲で基質阻害を受けることや至適pH、至適温度、基質特異性と阻害剤(殺虫剤を含む)に対する感受性などは,天然本酵素とほぼ同じであったが、各基質に対するキネティックパラメーターは大きく異なっていることが明らかとなった。 2.大腸菌を用いたコイのアセチルコリンエステラーゼ生産と抗体作成 大腸菌を用いて,コイのアセチルコリンエステラーゼ"遺伝子組換え触媒サブユニット"を生産した。組換え酵素は多量に発現したが封入体を形成した。そこで、封入体から組換え酵素を単離・精製し、それを抗原として、ウサギに免疫して抗体を作製した。得られた抗体は大腸菌で生産させた組換えコイアセチルコリンエステラーゼだけではなく,天然コイ本酵素と,酵母で生産させた組換えコイ本酵素も認識し,アセチルコリンエステラーゼの免疫学的検出に使用可能であることが示された。
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