研究概要 |
本年度は,既存の地盤情報データベースから,250m四方のメッシュの代表的浅層地盤モデル(Representative Soil Profile Model; RSPM)を構築する手法を確立した。具体的には,大阪市域の中心部を取り上げ,上町台地を中心として比較的均質な堆積層を有する西大阪と,上町断層周辺の地層急変部,汽水性の鋭敏粘土が堆積している東大阪という異なる堆積環境と地層構成を有するエリアを網羅するメッシュ群をピックアップして,より客観的なモデル化手法を構築することを試みた。西大阪に代表される比較的一様堆積層地盤では,メッシュ内のボーリング情報を単純に平均化するA法が簡単かつ個人的誤差がなくスピーディにモデル化できる。これに対して,地層急変部や谷地形や溺れ谷のような局部的特徴を有するような地盤では,単純平均化によって地盤の特徴が埋没してしまい,専門的知見を基づいて恣意的にボーリング情報を選択するC法によるモデル化が必要であることがわかった。またメッシュ内にボーリングのない空白メッシュに対しては,微地形区分図の援用,C法による周辺地盤の特徴を勘案した恣意的なモデル化が必要となり,機械的な作業では高品質のRSPMは構築できないことが明らかとなった。次に,地盤のフラジリティの評価について,地盤情報がアナログで蓄積されている地方自治体をサポートするプログラムを構築した。具体的には三重県鳥羽市の大明地区を取り上げ,リアス式海岸で複雑なアンジュレーションを持つ基盤上に40mに達する粘土が堆積している地盤上に埋立によって造成された地盤が大きく不等沈下している地区のアセスメントを実施した。三次元レーザー測量による標高のディジタル化,アナログ地盤情報のデータベース化,データベースに基づく基盤構造の三次元モデルの構築,対象地域全面における圧密沈下解析,チェックボーリングによる実沈下量の把握と解析結果の妥当性の検証という手順をふみ,沈下の原因と将来予測を行うことによって,当該地盤の補修のあり方,防災上の問題点を抽出し,今後の方向付けを行った。
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