研究課題/領域番号 |
19652024
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研究種目 |
挑戦的萌芽研究
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配分区分 | 補助金 |
研究分野 |
ヨーロッパ語系文学
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研究機関 | 東京外国語大学 |
研究代表者 |
博多 かおる (博多 カオル) 東京外国語大学, 大学院・総合国際学研究院, 准教授 (60368446)
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研究期間 (年度) |
2007 – 2009
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研究課題ステータス |
完了 (2009年度)
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配分額 *注記 |
2,100千円 (直接経費: 2,100千円)
2009年度: 600千円 (直接経費: 600千円)
2008年度: 700千円 (直接経費: 700千円)
2007年度: 800千円 (直接経費: 800千円)
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キーワード | 仏文学 / 文学論 / 文化論 / 社会研究 / 芸術論 / 音楽論 / 都市 / 感覚 / フランス文学 / 19世紀フランス社会史 / 音楽史 / 感性史 |
研究概要 |
第一に、音楽作品に表れた感覚風景の変化についてであるが、社交界の事情を考慮した研究が資料入手の点から困難と判明したため、音楽作品に内在する要素とロマン派的風土の関係についての研究に重点を移した。パリのヴィレット音楽博物資料館における調査を経て、ベルリオーズらロマン派の作曲家が、グロテスクなもの、現実社会と夢想の交錯する世界を、異なった次元を喚起する音の複層的関係によって表現したことを見た。この成果については、22年度中に論文としてまとめるとともに、今後の研究において発展させていく。 第二に、都市と人間感覚の関係について、文学作品における都市と俯瞰という観点から、研究成果を論文にまとめた。19世紀フランス文学において、都市を俯瞰する者の視点が、神の視点や非人称的な視点から、情念を秘めた人間個人の視点へとしばしばずれていったことを示した。また、象徴的なイメージが、現実の都市が人間に感じさせるもの、すなわち絶え間ない光の変化、においや動き、振動、音などと重なっていった過程をたどった。都市と人間との関係が密接になり、感覚的な共鳴や精神的な連帯を生みだした状況を、文学作品の読解と、19世紀のパリという都市の構造的変化をふまえて明らかにした。 第三に、花の表象と、公共空間における花の使用について、パリ国立図書館において資料調査を行い、文学作品の分析から考察を深めた。19世紀において、花は象徴として用いられるのみではなく、その感覚的効能が人間の内面世界との呼応において捉えられ、芸術作品の仕組みに影響を及ぼした。同時に、他の文化圏からフランスの市場へと花が流入し、金融・上流ブルジョワの資金を支えとして社交の場に高額な花が登場した事情もまた、文学作品の中では人間の感情が紡ぐ物語に組み込まれている。この点については、さらに補足的な調査を行った上で、論文として発表する予定である。
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