研究概要 |
本研究では,知識社会における知識ネットワーク構造について検討し,主に生産活動における組織学習の役割の探求を行う.競争的環境において相互学習を伴う知識ネットワークのモデル化を試みる.企業間で相互学習が行われる場合における知識ネットワークの動態の評価を行う.本年度は,理論モデルの拡張,シミュレーション分析の実施,及び学習地域の調査を行った. 学習地域のシミュレーションモデルの精緻化を行った.いくつかのケースを設定し,学習地域における知識ストック蓄積の動学シミュレーションを実施した.本モデルのシミュレーション分析から,企業間の相互学習には最適なタイムラグが存在すること,そして学習地域には最適なサイズが存在することが示された. 学習地域に生じた技術的革新が,他の産業部門へ伝播拡散する効果を計測する一般均衡モデルの開発を行った.技術的な伝播拡散効果が生じるケースにおける補助金政策の効果をシミュレーションにより分析した.学習地域から生み出される技術進歩がもたらす長期的な経済効果を計測するためには帰着ベース便益の評価が重要であることが明らかとなった.また,家計部門を対象とした習熟プロセスのモデル化とシミュレーション分析を実施した. GISで利用可能な社会経済データを用いて,企業の生産性に及ぼすネットワーク効果を評価する手法を検討した.空間回帰モデルを用いて,学習地域モデルの重要なファクターである空間的スピルオーバー効果の計測を試みた.創造的知識形成による都市地域再生に向けて,学習地域を理論的・実証的に評価する方法について総括した.
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