研究概要 |
高齢者の居住型サービスの将来像を考えるにあたっては、60代に達しつつある「団塊世代」の高齢化に伴い現在の高齢者施設では満たされない新たなニーズが生まれることが予想される。本研究では東京都在住在宅高齢者の居住型サービスに対する方向性についての調査を行って方向性の特徴を検討し、団塊世代の志向性と比較することを目的とした。調査対象として東京都A区における84の老人クラブから各10名の会員にアンケートへの協力を依頼し、「ケア付き住宅に対する志向性評価尺度」による方向性の評価を行った。その結果在宅高齢者がケア付き住宅に最も期待する機能は「安全・決適」で「コミュニティ機能」に対する期待度がそれに次き「自律性」に対する期待度が最も低いことが示された.前年度までに実施した団塊世代の調査結果と比較すると、東京都在住の団塊世代を対象とした調査では「自律性」に対する期待度が「コミュニティ機能」に対する期待度を大きく上回っており,居住型サービスでの生活において団塊世代はプライバシーを重視し個人の生活を楽しむ意向が強く在宅高齢者は居住者同士の人間関係を重視する傾向があるという意識の違いが明らかになった.一方で地方在住団塊世代では本調査結果と似通った志向性を示しており,居住型サービスに対する志向性に関しては世代間および地域間のいずれにおいても意識の違いが大きいことが示された.介護の担い手や要介護期の生活の場所に対する意識は介護保険の導入後急激に変化しており,こうした過渡期における意識の変化は地方都市よりも大都市,高齢者よりも団塊世代において先行することが一般的と考えられる.したがって東京都在住団塊世代の意識が将来的な意識の変化に最も近いものと解釈できることから,今後の居住型サービスにおいては居住者が個人としての生活が楽しめる水準の自律性の確保が重要な課題であることが示された.
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