研究概要 |
(1)具体的内容/研究の目的である「児童の方言による発話に内在する個々の微妙な差異を聞き分ける力に支えられた教授話法の在り方を明らかにすることで,人間関係を開き,確かな国語の力を育成する話しことばによる国語教室の構築ができる」ことの確信を得ることができた。本研究においては多くの教室談話を詳細に分析した。このことによって,児童の「発話の内容」と「発話のかたち(レジスター)」に一定の関係性があることが分かった。感覚的な発話内容は方言(生活ことばレジスター)を用いた発話によることが多く,熟考した発話内容は共通語(授業ことばレジスター)を用いた発話になる傾向がある。また,教師による発問からはじまる児童の思考の完結に至るまでの過程における談話状況(学習コミュニケーション)では,レジスターの交替が図られている。このレジスターの交替をうまく展開できるかどうかが授業の深化(児童の思考や理解)と大きな関係がある。 (2)意義/レジスターの交替は児童にとって無意識に行われている。レジスターの切り替えや文脈の編集は教師に任されている。教師がレジスターの切り替えを絶妙な時期に図ることで授業談話を深い思考過程に展開することができるのである。ここに本研究の意義がある。 (3)重要性/以上のように,教師による「レジスターの交替に着眼した談話編集力」は授業には不可欠である。この「談話編集力」は教授聞解力に支えられていると考えられる。単に親しみやすいというだけで,日常会話のようなことばづかい(生活ことばレジスター)で授業を行ってしまうために,感覚的な発話だけが繰り返され深まった教室談話にならず,思考する授業が成立しにくいと言われる新規採用教員及び若年教員の指導力向上のためには「談話編集力」の向上が期待される。また,本研究の成果はその一助となると考える。
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