研究概要 |
1999年に構成したモジュライ空間のコンパクト化SQ_(g,K)に加えて,もうひとつ自然なコンパクト化が[2]で構成された.また,ふたつのコンパクト化の間の関係について基本的な定理が[2]で証明された: 定理:SQ_(g,K)^toricからSQ_(g,K)への自然な射が存在する.これは内部A_(g,N)上では恒等写像であって,両者の正規化の同型を引き起こす. 今年度の目標の一つはアーベル多様体のモジュライ空間を悪い素点までコンパクト化を延長し,悪い素点での振る舞いを理解することであった.この点では多くの進展があった.たとえば,この問題で知られている結果はKatz-Mazur,Deligne-Rapoporlの1次元の結果であるが,この場合に一部非常に具体的に記述することができ,一般的な視点で見ることができるようになった.さらにDemazureのp-可除群の理論を適用して,一般の場合(高次元)でも詳細に研究できる状況を迎えている.現在鋭意研究中である.たとえば,\Gamma(3)の場合,[\Gamma:\Gamma(3)]=24であるが,これに対応して,標数3の超特異楕円曲線の全ての一般レベル構造を表現する空間として,階数24の有限スキームが得られる.さらに,モジュライ空間とその上の普遍楕円曲線は,局所的に整数環{\bf Z}[\zeta_3]の上の族としても構成される.
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