研究概要 |
平成20年度は,おもにトロピカル非特異トーリック多様体内の超曲面が固有に交わる場合の交点重複度のトロピカルな公式,および,固有に交わらない場合を含めて交叉積を扱う研究を実施した. トロピカル非特異トーリック多様体内のいくつかの超曲面が固有に交わり,かつ,0次元の交叉をもつときに,交点重複度の一般的な公式の予想を得た.これは前年度に,3次元トロピカルトーリック多様体に関して得られた公式の拡張になっている.3次元の場合には,ヒューリステイクな証明は得られたが,数学的な証明について現在,検討を続けている.4次元までは3次元と同様に議論できるが,5次元以上では,超曲面の固有な交わりが0次元になる場合でさえも,交わりの多様性から3,4次元の議論では不十分であり,2次元の場合に利用した射影公式に代わる方法を研究中である. 一方,中間次元のサイクルを含めた交叉積の定式化において,代数幾何におけるサイクルの交わりと,そのサイクルのトロピカル化における交わりに生じる,固有性の違いについて焦点をあてて研究した.交点理論を考えるには,トロピカル射影トーリック多様体のようなコンパクトな多様体で考える必要があり,従来の安定な交叉だけでは交点理論を展開するには十分でなく,トーラス軌道が稠密な領域で固有でない交わりにおける交点重複度の定式化についていくつか候補を得た.
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