研究概要 |
弦理論の双対性から,佐々木・アインシュタイン多様体上のラプラシアンの固有関数と4次元超対称ゲージ理論のBPS状態の対応が予言され,これから佐々木・アインシュタイン多様体上のラプラシアンの固有関数としてホイン関数(3つの確定特異点をもつ2階フックス型常微分方程式の大域解)の存在が予想される.この検証を目指したが,残念ながら未解決のままに終わった.これは対応する超対称ゲージ理論のBPS状態の理解が不十分であったことが原因である. 菅野は4次元超対称ゲージ理論のBPS状態の数え上げに関する組み合わせ論的性質を分配関数の視点から研究した.これは課題として上に挙げた4次元超対称ゲージ理論のBPS状態の理解に寄与することを期待している.BPS状態の数え上げの生成母関数はNekrasovの分配関数と呼ばれているが,今年度はこれを高次元ゲージ理論に拡張する試みを行った.局所化公式を用いて分配関数を計算すると4次元では分配関数をヤング図に関する足し挙げで書くことができるが,6次元では立体ヤング図(平面分割)に関する足し挙げとして書くことができる.この計算を具体的に実行し6次元ゲージ理論に対して分配.関数の一般型を予想し,その一部について証明を与えた. 研究分担者の落合は,反自己共役作用素のスペクトルとその分布について研究を行った.特にヒルベルト空間上の特別な積分核で表わされるヒルベルト行列の反自己共役バージョンを考察し,その作用素のスペクトルの分布に関するいくつかの予想を提唱した.また研究協力者の安井は,高次元ブラックホールの"隠れた対称性"を研究し,高次元ブラックホール解の一意性定理を証明した.
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