研究概要 |
次世代加速器の基礎研究用に開発されたテーブルトップシステム“S-POD(Simulator for Particle Orbit Dynamics)"を用い,大強度ビームの共鳴不安定性に関する系統的実験を実施した。複数の高周波四重極電場を重ね合わせることにより,加速器のラティス構造や磁場誤差が共鳴条件に与える効果を詳細に調べた。また,1次元および2次元の集団共鳴理論の予言を実験データと比較検討した。共鳴条件のラティス構造依存性,空間電荷効果による不安定領域のシフト,共鳴の次数とシフト量の関係,誤差磁場が誘起する弱い共鳴の存在,等,コヒーレント共鳴現象に関する多くの予想を実験的に確認することに成功した。尚,前年度の実験で観測された「隣接して存在する二つの不安定領域」の発生源はいずれもコヒーレント共鳴で,幅の広い方が4次の非線形共鳴,狭い方が2次の共鳴に因るものであることが分かった。以上の実験はアルゴンイオンのプラズマを使って行ったが,レーザー冷却可能なカルシウムイオンに基づく実験も並行して実施した。プラズマ集積による捕獲粒子数の増大と密度制御,クーロン結晶の生成と射出などに関する実験を現在継続している 他方,ソレノイドトラップに捕獲された純電子プラズマの密度制御実験を行った。閉じ込め磁場の強度などを調整することにより,今後のビームハロー生成実験に必要な,きわめて大きなチューンシフトを実現した。サイドバンド冷却によるプラズマ捕獲時間の伸長化にも成功している。また,サイクロトロン加熱を使って,プラズマの実空間形状がある程度制御可能であることを確認した。
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