研究課題
挑戦的萌芽研究
前年度までの素材選定試験、加工試験によりラミネート素材としてはPETを用い、ラミネータで使用する接着剤をホットメルト式で多層化したセル構造を作成した。セルを形成するメッシュは16.5mech/inch及び31.8mesh/inchのPET素材を2:1の割合で使用し、電極には40μmの銅箔を使用した。またセル内部にはAr+CH4(90:10)混合ガスを用い高電圧を2kV印加した。このような状態でシンチレータとコインシデンスする信号を観測し、基本性能を確認した、主な測定項目としては、パルスの電荷量分布、時間分解能、長期安定性試験などである。β線源による出力電荷は約20pC程度でガスゲインとしては10万以上が達成していると考えられ、反応時間分布においては20ns以内に83%のイベントが観測された。安定動作試験では100時間連続動作時において連続放電による過電流およびチャージアップによる動作不安定状態は発生せず、PET素材による放射線測定器の使用可能性を示した。これはPETの比誘電率が3程度と大きいために電極間のメッシュの隙間での電場を局所的に高めることが可能になり、結果的にガス増幅による電子雲の発達を局所的に抑えることが可能になったためと考える。これらの結果は既存のマイクロパターンガスデテクターに比べ優位なガス増幅率、反応時間特性があると結論つけることができる。生産コストとしては約10cm^2で千円以内を達成した。このようなことから今回の研究目的となるメッシュとフィルムによるセル構造を利用した放射線検出器の可能性を示したと考える。これらの結果は日本物理学会において報告した。今後さらなる課題としては位置分解能、大面積化による影響の試験などが挙げられる。
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