研究概要 |
有機ホスフィンは,遷移金属の配位子,有機材料として用いられ,有機化学において必要不可欠な化合物群である。我々は1-アルキニルホスフィン誘導体を出発原料とした有機ホスフィンの合成について研究を行っている。今回我々は1-アルキニルホスフィン誘導体に対する窒素求核剤の付加反応について検討を行った。その結果、炭酸セシウム触媒存在下1-アルキニルホスフィンスルフィドに対して種々のアミドを作用させると位置および立体選択的に付加反応が進行することを見いだした。 アルゴン雰囲気下DMSO溶媒中10mol%の炭酸セシウム存在下、90℃でジフェニル(フェニルエチニル)ホスフィンスルフィドとN-ベンジルトシルアミドを反応させた。室温まで冷却後,常法通りの後処理およびシリカゲルカラム精製を行うと、N-ベンジル-N-(1-フェニル-2-ジフェニルチオホスフィニルエテニル)トシルアミドが,収率84%、E/Z比96対4で得られた。反応は完全な位置選択性と高いE選択的で進行した。立体異性体の混合物である生成物の再結晶を行うと、E体の生成物のみを71%の収率で得ることができた。さらに、テトラフルオロホウ酸銀と(1,5-シクロオクタジエン)クロロイリジウム錯体、フェロセン由来の光学活性二座ホスフィン配位子から調製されるカチオン性光学活性イリジウム錯体触媒存在下水素雰囲気下得られた生成物の二重結合部分を不斉還元することにより、光学活性アミノホスフィン骨格を創出できた。二座アミノホスフィン配位子への斬新なアプローチになると期待できる。
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