研究概要 |
W/C多層膜の上に厚さ1nmのAu薄膜を蒸着した基板に対して,長さの違う2種類の分子,HS-(CH_2)_<15>-COOCH_3(以下,C16と表記)およびHS-(CH_2)_<11>-COOCH_3(C12と表記)を用いて自己組織化単分子膜を作製した。この試料に対して530eV付近のいくつかのエネルギーにおいて軟X線を照射しながら,軟X線吸収に伴う放出電子および化学結合の切断に伴う脱離イオンを検出したところ,ブラッグ条件を満たす入射角の付近(基板表面から20度程度)において,定在波の発生に伴う電子およびイオンの強度変化が確認された。さらに,エネルギー依存性を詳細に確認したところ,どちらの分子に対しても,イオン脱離が起こりやすいといわれる01s→・*(OCH_3)ピークにおいて脱離イオンの増加が観測され,サイト選択的なイオン脱離を確認することが出来た。一方,高さ選択性に関しては,C16とC12とでは分子の中のOCH_3部分の基板表面からの高さが異なるため,脱離イオンの強度がそれぞれ異なった角度依存性を示すことが期待される。実際に比較を行ったところ明確な違いが観測され,ある入射角ではC16のイオン脱離が増加するのに対し,別の入射角ではC12のイオン脱離が増加することが確認できた。これらの実験事実は,入射軟X線のエネルギーと入射角を適切に制御することによって,特定の高さにある特定のサイトにおける光化学反応(結合切断)を選択的に増加させられることを意味している。
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