研究概要 |
本年度の成果は次のように要約される. 1) 細胞間ネットワークの力学刺激感知・情報伝達挙動に対する確率モデルの導入 実際の骨細胞の力学刺激感知感度および骨細胞ネットワークにおける隣接骨細胞への伝達情報量には,大きなばらつきが存在すると考えられる.そこで,前年度に構築した形態異方性を考慮した力学刺激感知・情報伝達モデルに確率モデルを導入した.これにより,骨形成・骨吸収の閾値と不感帯が数理モデル上で表現可能となった. 2) 各階層を貫く数理的枠組みの構築 以上で構築した骨リモデリング現象の各階層での力学挙動・相互作用モデルを組み込んで,微視的な細胞ネットワークによる力学刺激感知(センサ)・情報伝達(プロセッサ)から,細胞活動による巨視的な骨構造リモデリング(アクチュエータ)までの全階層を貫く骨リモデリングのマルチスケール力学的数理モデルを構築した. 3) 皮質骨・海綿骨における骨梁・細胞間ネットワーク構造の3次元観察 ブタ大腿骨を用いて,3次元マイクロCTスキャン及び共焦点レーザー蛍光顕微鏡を用いて,皮質骨および海綿骨における骨梁・細胞間ネットワーク実構造を観察した. 4) 骨再生/リモデリングシミュレーション 3)で観察した実構造を対象として,2)で構築したマルチスケール数理モデルを用いて,骨再生/リモデリングシミュレーションを行い,細部のパラメータを訂正する.これにより,骨再生/リモデリングの精密な数理モデルを完成させた.
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