研究概要 |
前年度は予備実験として傾斜対向型DCマグネトロンスパッタリング装置を用いてガラス基板上およびPET基板上に可視光応答型TiON型光触媒薄膜とSiON型酸素透過抑制膜を成膜し,各膜の可視光透過率,光触媒性能および酸素透過性などの性能評価を行った.その結果,SiON型酸素透過抑制膜は十分な性能を発揮できるが,スパッタリング装置で直接成膜したTiON薄膜は成膜可能な条件範囲が極めて狭いこと,またTiON薄膜が作成できてもそのままでは結晶性が悪く,十分な光触媒性能が発揮されなかった.そこで結晶化促進のために大気雰囲気中でTiON薄膜の焼鈍を行ったが,酸化が過度に進行し紫外光では作動するものの可視光では光触媒作用が発現しなかった.そこで,本年度は新しいTiON膜の作成方法として,窒化チタンを熱処理によって酸化させる手法を検討した.検討に際しては,まず,石英基板上に成膜し,その光学的特性および光分解能を評価した.その後,金属基板上にTiNを被覆・熱処理し,その光分解能を調べた.その際,酸化速度を制御するため,真空下でも熱処理を行った. その結果,透明な石英基板を用いた場合,高温で熱処理を行うことによって吸収端の赤方移行が生じ,バンドギャップが狭さく化されることがわかった。しかし,750℃で熱処理を行うと、大きな粒径のルチル型優位の結晶構造となり、ほとんど光分解能が確認できなかった。そのため,ルチル優先配向膜とならない範囲でもっとも高い温度である650℃で熱処理を行うと,紫外及び可視光のいずれの場合に於いても最も高い光分解能を示した. 一方,金属基板を用いた場合では熱処理に伴う膜のはく離および650℃程度でのルチル化の促進が問題となった.これは基板と膜の熱膨張係数の差および基板の酸化による析出物が原因である.そのため,550℃、1000Paで熱処理を行うことによって,高い光触媒特性をもつ膜を作成できることが明らかになった.
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