研究概要 |
マイクロ化学チップに用いられるガラス板には,試薬の流路となる幅数十〜数百μmの微細溝が形成されている.溝には試薬等の流れを円滑にし,残留や付着を防ぐために高精度表面が求められる.本研究は,複雑な流路内面(底面,側面)を平滑加工する技術を開発することを目的としており,現在までに得られた成果は次の通りである. (1)加工原理に基づく加工装置の開発 加工原理を具現化する加工装置を設計し,X-Yテーブル,各種部品を購入した.電磁コイルと磁極は,有限要素法を用いた磁場解析を駆使して加工部に求められる磁場分布を形成できる寸法形状を選定し,設計・製作した。加工装置としては両者を組み合わせることで完成となる.一方,この加工装置の準備と平行して,マイクロ工具の挙動および加工作用を調べるための簡易な基礎実験用加工装置も作製した. (2)マイクロ工具の回転駆動源に関する検討 基礎実験として永久磁石の先端に大きさ(直径1mm)に成形された円筒状工具を装着したものを自作した.(1)で述べた簡易加工装置を用い,永久磁石の磁気特性,外部磁場の変動周波数と電流,工具材質が工具の回転挙動に及ぼす影響を調べた.その結果,ネオジウム磁石の方がサマリウムコバルト磁石よりも高磁力を発生でき,外部変動磁場に追従して高速回転できること,工具の磁気特性は工具材質に無関係であること等が確認された.さらに,工具回転の高速化には軽量化が鍵となることを示し,350Hzの変動磁場に追従して高速回転できるマイクロ工具を開発した. (3)マイクロ工具の加工作用に関する検討 上記工具を用い,ホウケイ酸ガラス板の研磨実験の前段階として,幅2mm,深さ3mmの直線溝を有するC2600銅板を加工対象にして研磨実験を行った.ダイヤモンドスラリーを用いたところ,2.6μmRzの表面粗さを1.7μmRzに平滑化することができ,本加工法の加工原理の妥当性を確認するとともに,本工具が具備すべき特徴について整理した.
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