研究概要 |
申請者は,微生物の持つ走性といわれる,環境下において各種情報に対して一定方向に移動する性質を利用して,微生物の行動を自在に制御し,微生物を「生きたマイクロマシン」として工学や医学などに活用することを研究している.本研究では,ミドリムシが青色の光に対して集まる正の指向性光走性を利用し,青色レーザ光をガルバノスキャナにより,プール内に自在に高速走査できる装置を開発し,プール内に任意形状の青色光の照射領域を形成することで,ミドリムシを青色光の照射領域に集めることで集団を形成し,その集団を様々な位置・形状に変形・移動させるように制御することで,ミドリムシ集団により物体のマニピュレーションを行わせようというものである. 本年度は,昨年度完成したプログラムをもとに,簡単な平面形状の突起を穴にはめ込む機械部品組み立てをミドリムシ集団に行わせることを検討した.これまでの物体搬送プログラムにおいては,搬送物体の位置を画像処理プログラムにより検出すればよかったが,この場合は,突起と穴の位置をともに検出する必要がある.また,突起先端部を穴に入れ込むときにはわざと挿入する突起パーツを傾けて片側を先に穴に挿入して,挿入した側の穴の壁をガイドに押し込むことで,挿入をより容易にすることができる.これを自動で操作するようにプログラムを開発し,実験を行ったところ,見事に突起を穴に挿入することに成功した.これは単純なデモに過ぎないが,「生きたマイクロマシン」としての走性により行動制御した微生物の可能性を大いにアピールする結果であると自負している. また,この方法の大きな欠点として,ミドリムシ集団との接触部の面積が大きくかつ比重の軽い,縦長の直方体をしたプラスティック部材しか運べないという問題があったが,この搬送可能なプラスティック直方体を作業用具として用い,これにより,比重が重くミドリムシ集団を直接衝突させても動かせない銅微小球を,作業用具を介してミドリムシ集団により搬送することにも成功した.これは,本手法の応用を大きく広げる結果である.
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