研究概要 |
本研究の目的は、有機強誘電体多層膜を用いて新たな原理の論理演算素子を創成すべく、その基本概念の取得、動作原理の探求を行うことである。本年度は分極相互作用を利用した論理演算素子の実証実験に不可欠な強誘電体論理セルとなる強誘電体多層膜をフレキシブル基板上に形成して論理動作の詳細を解析し、有機強誘電体のスイッチング機能を応用した非トランジスタ型の有機論理法の動作原理を考察した。本動作を検証するため、フッ化ビニリデンVDFオリゴマー(n=12)を用いてデバイス試作を行った。電極材料にはA1を使用し、A1配線はVDFオリゴマー薄膜を介して、3つのラインが1か所でクロスオーバーするパターンとした。クロス領域は0.25mm^2、それぞれの膜厚はA1:60nm、VDF:220nmである。作製した積層体に、プリセット用のポーリング処理を施した後、論理入力として(input1,input2)=(1,0)、(0,1)、(1,1)、(0,0)をそれぞれ印加した。本実験の場合、入力論理値"1"は、+48Vであって、"0"は-48Vであり、その矩形波を入力とした。矩形波としての印加時間は250usecである。それぞれの入力に対して観測された出力電荷の時間変化を観測したところ、(1,0)、(0,1)での出力がほぼ一致することが判り、その値は、59nCであった。この値はポーリング処理時での各層での残留分極量に一致する。また(1,1)での出力がちょうどその2倍に相当する118nCであり、分極反転に伴うスイッチング動作が実際のデバイスでも想定通りに実行できていると言える。以上の結果より、例えば出力の閾値を50nCとすれば、ORゲート、100nCとすればANDゲートとして動作、実行できることが判明し、強誘電体多層膜を用いた論理ゲート動作を実証した。
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