研究概要 |
本研究では,超短パルスレーザー光電界電離による励起・電離を行い,放電キャピラリープラズマをレーザー媒質とした卓上型真空紫外(アルゴンエキシマの場合は波長126nm)の発振を実現することを目的として,その基礎パラメータを明らかにした. レーザー発振のためにはプラズマの特性を知ることが重要であるため,中空ファイバー中のマイクロプラズマパラメータの時間分解,空間分解の計測が必要である.特に円柱状ファイバー断面内での電子の密度分布は励起レーザーならびに発生する真空紫外光の伝搬特性を左右し,さらなるガイドの役割も持つことが考えられることから,より長尺のプラズマ生成の際の重要な実験データとなることが期待される.以上から,実験によるプラズマパラメータの詳細な測定が必要となり,その結果をシミュレーションと比較することによりプラズマ状態の定量的な検討を行った. 放電開始から80,120,160ns後の電子密度の半径方向分布を観測した.半径方向導波路構造は放電開始から80-160nsではほぼ維持されていることが明らかになった.放電開始から160ns後における軸上電子密度および電子密度差はそれぞれ(1-2)x1017cm-3および4x1017cm-3であった.放電開始から150ns後の軸上の電子密度分布を観測したところ,電子密度は(1-3)x1017cm-3であり,キャピラリーに沿ってほぼ一様であった. これに加えて,時間分解分光を行うことにより,電子温度の時間変化を観測した.放電電流が最大となる時刻150ns付近で電子温度は最大となり,約4eVであった.その後,冷却により約1eV程度となることが分かった.時間積分計測による電子温度は0.5eV程度であったことから,この最大電子温度は妥当であると考えている. これらのことから,レーザー発振に必要な導波路が形成されていることが分かった.今後,発振実験を開始する予定である.
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