研究概要 |
本研究の目的は,複雑で多様なシステムに対する制御系設計を実現するために「分解能」に着目にした新しい制御理論に向けた基礎理論を構築することにある.特に本研究では,時間,空間,レベル,周波数等異なる性質の分解能に着目した多分解能動的システムのモデル化とその解析に焦点を当てる. 本年度は,主に「多分解能動的システムのモデル化」に焦点を当てて研究を実施した.また,SICE Annual Conference 2009において,オアーガナイズドセッション「Multi-Resolved Dynamical System(MRDS)」を企画した.主たる成果は,以下の通りである. 1.階層化動的システムの表現と大規模系の近似モデリング:階層化動的マルチエージェントシステムの比較的一般的な表現を提案し,階層間接続行列の役割を明らかにした.また,気象モデルなどの大規模複雑系の,階層構造に着目した近似モデルの導出法を与えた.2.階層化動的システムの基本解析:同一ダイナミクスを持つ非常に多くの動的要素が結合された大規模系を対象に,その階層化表現を提案し,安定性など基本特性の解析を行った.さらにマルチロボットによる巡回追従型の協調捕獲の解析・設計や遺伝子制御ネットワークの解析への適用を通じてその有効性を確認した.3.モデル予測制御の性能解析の多分解能的アプローチ:モデル予測制御の閉ループ系である区分的アファインシステムの制御性能や安定性を解析する手段として,時間を遡って解を発展させることで状態空間を各時間ステッブごとに多分解能化し,制御性能値やリアプノフ関数を求める手法を提案した.4.状態設定,離散時間系の制御法:前年度導かれた有限時間線形系の特異値分解法を発展させ,制御系の状態設定,補償入力の設計問題を扱う分解表現を導いた.また,結果の一部が離散時間系においても有用であることを示した.5.ネットワーク構造と性能特性:複雑な構造を有するネットワークド制御系を対象とし,ネットワークの構造および通信容量とシステム全体の特性について解析した.
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