研究概要 |
本研究は,河川堤防などの不飽和な地盤の熱電変換材料としての可能性を探るため,不飽和土の熱的・電気的性質を基礎的に究明したものである.不飽和土に熱を負荷したときにゼーベック効果を期待して起電力の発生を室内試験によって試みたが,試験条件等を再考して継続的に検討する必要性があった.しかしながら,本研究過程において,不飽和土に熱を与え乾燥させたときの特性,電気伝導の特性について次のような知見が得られた. 1.不飽和土に一定の熱を与え乾燥させて得られる乾燥特性曲線を用いて,水分特性曲線を特徴付ける要因の一つである残留体積含水率を評価できることが判明した. 2.水分特性曲線を表す関数モデル式に含まれる未知パラメータを推定することによって,この曲線を推定する手法とその精度を検証した.乾燥特性曲線で示される液状水移動の状態を不飽和浸透流解析モデルによって逆解析してパラメータの最適値を推定するものであるが,逆解析によって得られた排水過程での水分特性曲線は測定したものとほぼ合致し,この手法によって簡便的に水分特性曲線を良好な精度で推定することができた. 3.不飽和土に通電させる試験によって,体積含水率が高く,あるいは水温が高くなるほど電気伝導度は高くなる性質を確認し,また,土中水の水質による影響も点検した. 以上のような結果を踏まえ,研究期間終了後も不飽和土の熱的性質と電気的性質の関係に分析を加え,不飽和土の熱電変換の可能性を継続して検討し見極めることとした.
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